スペシャル・トレンドレポート

2022年のマーケット相場観は正しいのか?(松崎 美子氏)

2022年1月5日

新年明けましておめでとうございます。本年も引き続き、よろしくお願いいたします。

2008年に起きた世界金融危機とリーマン・ショック以降、我々は「低インフレ/デフレ」に悩まされ続け、一日も早く「インフレ」が戻ってきてくれることを願っていた。しかしあれだけ待ち望んだインフレは、パンデミックとともにかなり暴力的に私たちの目の前に現れた。それが2021年の大きな誤算であり、マーケット参加者全員が読み間違えたことであった。

これを受け、2021年は金融緩和政策からの出口戦略を選択した国々が増え、その政策の方向性が今年の相場観のベースとなっている。

十人が十人片寄るときは必ずその裏くるものなり。

大阪堂島の米相場で成功を収めた牛田権三郎の『三猿金泉録』に載っている米相場における格言に、「十人が十人片寄るときは決して(必ず)その裏くるものなり」というものがある。この格言は株にも為替にも通用すると私は考える。とにかく皆が同じ相場観を持つとロクなことがない。

今年の相場観のコンセンサスは、以下の通りである。

・利上げが見込める英国・カナダ・ニュージーランド・アメリカの通貨が買い。
・据え置き継続のオーストラリアと日本の通貨が売り。
・なんだかんだ言っても緩和策の継続が予想されるユーロ圏とスイスが、同じく売り。
・資源国通貨のうち、特にNOK・CAD・NZDは買い。
・新興国通貨では、RUBが買い。BRLとTRYが売り。

ほとんどの大手銀行や著名な投資顧問は、この相場観を共有している。非常に危険な1年となりそうだ。

景気はパンデミック次第

残念ながら、今年の景気や金融政策は昨年同様にコロナ感染状況に大きく左右されるであろう。そうは言うものの、1月2日に英国保健安全保障庁(UKHSA)が発表したオミクロンに関する大規模データによると、デルタ種は肺までやられるのに対し、オミクロンは喉で止まる可能性が高く、(デルタ株よりは)重篤化するリスクが少ないそうだ。そして、3回目の接種を受ければ、入院の必要性もかなり低下するとも書かれている。

https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/1044481/Technical-Briefing-31-Dec-2021-Omicron_severity_update.pdf

もしこの発表内容が正しければ、主要国におけるCovidはインフルエンザと同列になるかもしれない。特に経口薬の普及が進めば、ますます心強い。その場合は、一気に主要国中銀の出口戦略が前倒されることになり、2022年はインフレ率が低下するという予想を全面的に変更せざるを得ない国が増えてくる。

逆に、オミクロンに続き新たな強烈な変異種が登場すれば、金融政策Uターン/逆戻りとなる可能性は捨てきれない。たぶん今年第一四半期を乗り切ったとしても油断できず、秋から冬にかけての時期が本当の勝負となるかもしれない。

問題は、中国ではないか?あの国は「ゼロ・コロナ」を目指しており、今後オミクロンの拡大次第では、地域別のロックダウンなどが実施され、ただでさえ苦しそうな中国景気が、さらに鈍化するリスクも想定しておくべきであろう。そうなると、AUDなどにもしわ寄せが行く可能性もある。

FOMC投票権を持つメンバーの交代

FXをはじめて間もない個人投資家さんは、はじめて知ることかもしれないが、毎年1月に、その年のFOMC投票メンバーを確認する作業が待っている。

米12地区連銀総裁のうち、ニューヨークだけは常に投票権があり、 残り11地区のうち、4地区の総裁に輪番制で投票権が回ってくる。 (残り7名の総裁は投票権なし)

2021年と22年の投票メンバーは以下の通りとなる。

ボストン連銀については新総裁が決定するまでの期間限定で、フィラデルフィア連銀ハーカー総裁が代理投票をすることが決まった。

2021年と22年のメンバーを比べると、今年はタカ派度が高いように感じたが、皆さんはいかがだろうか?

輪番制以外で気をつける点は、総裁・副総裁を含む8名の固定メンバーの空席である。今年は最大3人の空席が生じ、バイデン大統領による指名待ち状態だ。選出メンバーによっては、再度タカ派/ハト派の偏りが変わるため、その点にも注意をしておこう。

ドイツ連銀新総裁決定

同じ中銀人事であるが、次はヨーロッパのドイツ。昨年突然の辞意を表明したバイトマン独連銀前総裁の後任として、1月2日のドイツ議会でナーゲル氏の総裁就任が承認された。

この方は、独連銀出身であるが 2016年独連銀副総裁選に破れた後、政府系のドイツ復興金融公庫(KFW)へ転職。 その後2020年に国際通貨基金(IMF) 銀行業務担当副責任者となった。

気になる金融政策に対する姿勢については、前任のバイトマン氏同様、タカ派と思われる。ドイツの新聞記事によるインタビューでは、ECBがQE策を導入した直後の2015年に、金融政策と財政政策をごちゃ混ぜにする政策の危険性を訴えたそうで、その時の発言が載っていた。

「There is a risk that the budgetary consolidation required in some euro countries will be put on the backburner, which could then increase political pressure on the ECB council to postpone an interest rate hike that is necessary from a monetary policy point of view.

このような(QE策)政策を導入した場合、本来であれば財政均衡に向けた努力をすべき国が、(財政規律の順守を)後回しにするリスクが出てくる。そしてこの動きは、後々にはECBが本来であれば利上げをすべき時期であるのに、それを遅らせるような政治的圧力に繋がる可能性がある。」

この発言は現在のECBをそのまま表わしており、先読みが鋭いと感心した。

今年のマーケットは難しい

皆さんは既に今年のストラテジーを決めたかもしれないが、私は未だに「今年はこの通貨ペアで行こう!」という明確なアイデアが固まっておらず、1月中は様子見をする覚悟である。文頭で紹介したように、今年は皆が皆、似たような相場観を持っているので、たぶん夏から秋に浮上するかもしれない「金融政策エラー」には気をつけたい。

ここでの「金融政策エラー」とは、政策運営のタイミングの間違いや、要人発言によるマーケットの政策変更に対する織り込み度の変化についてである。

例えば、米FOMCでは今年第2四半期に最初の利上げが織り込まれているが、それがもっと遅くなったり、或いは年内3回の利上げ予想が4回に増えたりすることを指す。このような「利上げ時期やタイミングの織り込み度」は金融政策理事会で発表される声明文や記者会見での発言。或いはインタビューや講演での発言次第で、コロコロ変わる。そして厄介なことに、「織り込み度」は数値化できない。相場に関わる各自が、自分なりの物差しを持ち、それで判断するしかない。相場の声をよく聴くことが非常に必要となる1年だと感じている。

ここからのマーケット

年末から気になっているのがポンドである。こちらは12月21日時点でのシカゴIMM通貨先物市場でのポンド建て玉である。12月16日の英中銀金融政策理事会で予想外の利上げをしたにもかかわらず、ショートが増えていて非常に驚いた。

引用:Forex Watcher http://www.forexwatcher.com/cmepos.htm

クリスマス直前のポンド上昇は、たぶんショート・カバーだったのかもしれない。それを確認するためにも、次回12月28日時点のポジションは必ずチェックしなければいけない。万が一ショートが減少していなかったり、もっと増えていた場合は、短期的にポンドの下げは諦めたほうが良いだろう。

12月の英国はCovidや政治などファンダメンタルズ的に買い材料はほとんどなかったので、マーケットは予想外の英中銀利上げが実施されても売り向かっていったのだろう。その場合、売値が魅力的なレベルではないことも考えられ、炙り出されるのも時間の問題かもしれない。

個人的には昨年同様、ユーロ売り/ポンド買いを考えているのだが、最悪の場合は0.84~0.87のレンジに今年も収まってしまうかもしれない。私が最も恐れているのは、金融政策の方向性をベースとして、世界中が「売り」と考えているユーロが、上昇するリスクである。予想に反し、ユーロ圏のインフレが一向に下がらず、じわじわと利上げ観測が高まれば、実際の利上げが年内になくてもマーケットはそれを織り込みに行き、溜まっているユーロ・ショートの損切り大会になるシナリオだ。

インフレ上昇がしつこければ、夏前後あたりからECBの緩和策継続に対しての雲行きが怪しくなるかもしれない。

油断大敵、利食い千人力の2022年の幕開けである。

松崎 美子氏プロフィール

松崎 美子(まつざき よしこ)
ロンドン在住の元為替ディーラー。東京でスイス系銀行Dealing Roomで見習いトレイダーとしてスタート。18カ月後に渡英決定。1989年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年シティーにある米系投資銀行に転職。その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、証拠金取引の話を聞き、早速証拠金取引開始。

本記事は2022年1月5日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、松崎美子氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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