スペシャル・トレンドレポート

12月・主要中銀金融政策理事会での注意点(松崎 美子氏)

2021年12月1日

オミクロン騒動で幕が開けた12月。この新株の分析には少なくとも2~3週間かかると言われており、早ければ分析結果発表と今年最後の米欧英の金融政策理事会時期とが一致する。思ったほど深刻な影響は与えないという前評判であるが、誰にも本当のところはわからない。そこで、今回のコラム記事では、「オミクロンの影響はほとんど考慮せず」に書こうと思うので、その点はご理解頂きたい。

先週発表された前回11月3日のFOMC議事要旨。そこでは、一部の理事がテーパリングの量やスピードを速めることを支持していることがわかり、FEDの利上げ時期の前倒し観測が高まった。

議事要旨のこの部分であるが、

「Various participants noted that the (policy-setting) Committee should be prepared to adjust the pace of asset purchases and raise the target range for the federal funds rate sooner than participants currently anticipated if inflation continued to run higher than levels consistent with the Committee’s objectives.”

インフレがFOMC予想よりも早いスピードで上昇し続けるのであれば、複数の理事達から、テーパリング内容を調整し、想定よりも早い時期に政策金利の引き上げに動くべきと言う意見が出た。」

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20211103.pdf

このチャートは私が作成したものであるが、左側が当初の予想。右側が、議事要旨発表以降の予想となっている。減額の150億ドルの内訳は、国債 100億ドルにMBS債 50億ドルを足したもの。300億ドルは、国債とMBS債の減額幅を2倍にしたものとなる。

もし12月15日のFOMCで右側の予想通りの発表となれば、FEDは来年3月末にテーパリングを終了し、6月に最初の利上げを実施するというのがコンセンサスになりつつある。

これを受け、ドルは大きく上昇した。

12月16日 英中銀金融政策理事会(MPC)

私が最も注目し、同時に頭を悩ませているのが、12月16日に開催される英中銀MPCである。前回11月3日のMPCでは、利上げ観測があれだけ高かったのに、結果は7対2で「据え置き」となった。

予想外の「据え置き」となった最大要因は、MPCのメンバー達が労働市場の現状をより正確に把握したいから。と言うのは、英国では9月30日にパンデミック支援策の目玉となっていた給与80%補償制度が終了したため、補償を受け取っていた人達の「その後」を把握するには、12月中旬に発表される「10月の雇用統計」の数字が必要となるからであろう。その意味では、12月14日に発表される10月の雇用統計は、ポンド取引をする人は絶対に見逃せない指標となる。

念のために既に発表された経済指標を振り返ると、11月に発表された9月・雇用統計と10月・消費者物価指数は、ともに良好で、12月利上げを支持する内容となっている。

12月16日 もう1つの注意点 ①

先週あたりから、ベイリー総裁とピル主席エコノミストは、英中銀のフォワードガイダンス制*を中止(或いは一時中止?)する趣旨の発言をしている。

そもそも英中銀がフォワードガイダンス制を導入したのは、2013年にカナダ中銀カーニー元総裁が英中銀総裁になってからであった。その後、特にフォワードガイダンスの是非については議論されていなかったが、パンデミックという前代未聞の事態を経験した今、フォワードガイダンスを使って将来の金融政策の変更時期をマーケットに伝えることは、困難となってきたのかもしれない。

*フォワードガイダンスとは?

現在の金融政策が 将来(フォワード)のいつ頃まで、どのような条件が整うまで継続するのかについて 今後の方針(ガイダンス)を示すもの 。「時間軸政策」とも呼ばれている

ベイリー総裁は、中期的な見通しが立てにくい今、英中銀はフォワードガイダンスを廃止して、各会合ごとに金融政策見通しをマーケットに伝えていく方法を選択したいという意向を漏らした。

12月も利上げをしない可能性あり?

12月14日発表の雇用統計、15日の消費者物価指数(CPI)はもちろんのこと、オミクロンの分析結果如何では、利上げが来年2月まで延期されるリスクが残る。

12月中旬ということもあり、マーケットの流動性はかなり低下していることが予想され、ボラティリティが高くなる可能性があるので注意したい。

12月16日 もう1つの注意点 ②

流動性の薄さ以外でもボラティリティが高まる要因を、1つ思い出した。

たしか私が日本到着後自主隔離をしていた10月上旬だったと記憶しているが、英中銀は今まで実施していた中銀⇔主要金融機関との意見交換の集まり廃止を発表している。という事は、12月MPCについても、主要金融機関は英中銀の動きを事前にある程度予想することが出来ないため、出たとこ勝負となりボラティリティはさらに高まるかもしれない。

ポンド取引をする人は、今まで以上にポジション管理と損切りの徹底をお願いしたい。

https://www.reuters.com/business/finance/exclusive-bank-england-ends-closed-door-policymaker-briefings-with-banks-2021-10-13/

中銀と金融機関との意見交換について書かれたロイターの記事によると、他の中銀も同様の集まりを持っていたようだ。しかし、欧州中銀(以下、ECB)が主要金融機関と意見交換をした際、主席エコノミストが消費者物価指数(CPI)の数字を誤って口にしてしまったようで、ECBもこの制度の廃止を検討していると書かれている。

12月16日 ECB金融政策理事会

英中銀と同じ日に、ECBからも重要な発表がある。米英とは違い、ECBは緩和策からの出口戦略を急いでいないが、最近の理事達の発言を聞く限り、インフレ上昇を快く思っていないことも確かである。

理事達の共通した意見としては、政策金利の引き上げは急いでいない。これは間違いないだろう。しかし、ここからのQE策については、意見が分かれることが予想される。もしオミクロン変異種の発覚がなければ、理事会ではかなり激しい議論がなされるはずであっただろう。

私の予想

こちらは、12月16日の理事会予想をひとつのチャートにまとめたものである。

PEPPについての私の予想は、

① 代替策の発表

PEPPの名称だけを変え、ほぼ同じ内容の代替策を発表する。その場合のチェックポイントは、国別の購入上限〔キャピタル・キー)撤廃をそのまま継続するか?それとも、財政ファイナンスに抵触することを覚悟してでも、 債務残高に応じて柔軟性を持たせて対応するなどの対策を加えるか?であろう

② 代替策なし。既存のAPPの国債購入策(PSPP)の増額 或いは条件変更

新しい代替策はなく、既存の国債購入策(PSPP)の増額に踏み切る。ただし、増額してもPSPPには各国の購入上限(キャピタル・キー)があるので、ECBによる購入額には「限度」が出てくるため、債務残高が高い国の国債は売られ、長期金利が上昇するリスクがある。

個人的には、もう一段の購入上限引き上げは、やらないと予想している。理由は、財政ファイナンス問題が浮上し、確実に反対国(主に北欧州各国)が出てくるからである。

ここからのユーロ

ドル高の影響もかなりあるだろうが、ユーロ/ドルは順調に下げてきている。

まず最初は、ECBが発表しているユーロ実効レートをチェックしてみよう。たしかにドル高によるユーロ安/ドル高の部分は大きいだろうが、ユーロそのものも下落基調となっているのが分かる。先週金曜日のオミクロン騒動でポジションの巻き返しがあったが、ここからはオミクロンの分析結果が判明するまでは、米長期金利(10年物国債利回り)を見ながらの取引となるのかもしれない。

出典:ECB
https://www.ecb.europa.eu/stats/balance_of_payments_and_external/eer/html/index.en.html

ユーロ/ドル 月足を見ると、ちょうど長期のサポートでしっかりと止まっているのが分かる。

次は、週足に移るが、もしオミクロンが予想以上に厄介な変異種と分かれば、米長期金利低下によるドル安なのか?有事のドル買いになるのか、正直判断に迷っている。もし後者となれば、ユーロ/ドルはもう一度、黒い点線で描いた長期サポートを試しに行くだろう。

万が一、そこで下抜けすれば、黄緑の点線を引いた1.0900を目標としたい。

逆に、オミクロンが事前予想のようにあまり悪さをしない変異種と判明すれば、今までのユーロ安/ドル高に期待したい。

松崎 美子氏プロフィール

松崎 美子(まつざき よしこ)
ロンドン在住の元為替ディーラー。東京でスイス系銀行Dealing Roomで見習いトレイダーとしてスタート。18カ月後に渡英決定。1989年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年シティーにある米系投資銀行に転職。その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、証拠金取引の話を聞き、早速証拠金取引開始。

本記事は2021年12月1日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、松崎美子氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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