スペシャル・トレンドレポート

FOMCを通過、需給面、金融政策の違いから「米ドル/円」115円超え視野(竹内 のりひろ氏)

2021年11月5日
東京支店のチーフディーラー :「ワクチンの接種が加速、緊急事態宣言も解除され人が動き出した。東京でも新規感染者が一桁という日もあり、コロナと共存する時代を実感するが、ガソリン価格が急上昇するなど日本でも物価上昇を実感するよ」
NYのシニアディーラー :「原油価格の上昇を加速させたのは、8月下旬に南部ルイジアナ州に上陸したハリケーン・アイダの影響が大きいですね。メキシコ湾岸に記録的な被害をもたらし、多くの製油所が生産停止を余儀なくされ、原油価格の上昇に拍車をかけました」
東京支店のチーフディーラー :「「円」は、日銀の金融政策の出口が全くみえず独歩安となっている。一方で、主要国でもコロナ後の金融緩和からの正常化が進み始め、そうした国の通貨が選択的に買われている。結果、「米ドル/円」だけでなく一部クロス円でも円安が進み、輸入物価が高騰している」
NYのシニアディーラー :「当地でも労働需給のひっ迫から、レストランなどでも人手が不足しているようです。「人手不足、店員に優しく!」なんて掲示するお店も多く、コロナ後の世界は需給ひっ迫、インフレ加速がキーワードになってきました。為替市場では先輩ご指摘の通り、強弱の二極化が鮮明ですね」

この二人の会話をまとめると、コロナ後の世界がみえてきたことで、労働需給のひっ迫から人手不足、物の価値が上昇するインフレが顕著だという。為替市場では買われる、または売られる通貨の二極化が明らかだという。今回は、為替市場で今何が起こっているのか、こうした動きは年末にかけても続くのか検証してみる。

昨年の今頃、新型コロナの感染拡大から、主要国でもロックダウン(都市封鎖)が相次ぎ、ヒトの流れが滞り、商店やレストランは休業に追い込まれた。単純労働者を中心に解雇の動きが続き、失業者が町にあふれ、都市は機能を失い凍った。こうして経済が大きなダメージを受けたことで、各国政府は経済対策や失業対策を充実させ、経済の回復を最優先させてきた。

中央銀行は、低金利や国債などを買い入れる空前絶後の規模の量的緩和を継続、NZや英国では今年の年明けまで真剣にマイナス金利の採用まで検討されていた。そうした流れは春先から一変、ワクチン接種の加速、航空需要の回復、ヒトの動きが戻り経済活動が再開されたことで一気に反動が出始めた。雇いたくても人が集まらない、物流が滞り、半導体が不足、各国の自動車生産にも支障をきたした。

今年、6月30日(水)のNY市場の引けから現時点(本レポートは11月4日(木)午後執筆)までの主要通貨の対米ドルでの騰落を計測してみた。上昇通貨が「NZドル」と「スイスフラン」、それ以外は全て下落に転じており、下落最上位は「円」となった。「円」は全てに通貨に対しパフォーマンスで劣り、結果、クロス円が上昇している。

新興国通貨に目を転じても、エルドアン大統領から執拗な利下げ要求を受け、トルコの中央銀行が利下げに転じた。「トルコリラ」も下げ足を速め、対「円」、「米ドル」ともに史上最安値を更新、ここでも通貨の二極化が鮮明となっている。

図表:筆者作成

「円」独歩安となる背景だが、日本には資源がなく全て輸入に頼ることになり、国際市況の影響を大きく受ける。通常、輸入は外貨建てであり、単価の上昇は、同一の数量を輸入した場合、円建てでは超過支払いを意味し貿易収支の悪化要因となる。さらに日本では少子高齢化が叫ばれ、生産性も劣り、一部を除くと目立った産業が育っておらず、企業投資という点で乏しい。業容を拡大する場合、どうしても海外の企業買収を優先することになり、これを対外直接投資と呼ぶ。

国際的なM&A(企業の合併買収)ということになるが、この場合、外貨建てであることから、多額の円売り・外貨買いを伴う。こうした資金フローは為替トレードなどと大きく異なり、一回発生すると反対の決済が持ち込まれることが当面ない。よく言う「円」売り切りで外国為替市場では実弾の「円」売りを伴う。

後者は景気の好不況にあまり関係ないが、前者の貿易収支の赤字化は、コロナ後の景気回復によりもたらされた副産物だ。経済が動き出すことは望ましいことだが、ここにきてその副産物が「円」売りの材料となって浮上している。以下のチャートが示すように、貿易赤字の拡大は「米ドル/円」上昇の先行指標となっている。

チャート:日本の財務省より筆者作成
※日本の貿易収支は軸を反転

図表:日本の財務省より筆者作成

米国の中央銀行であるFRBは、金融政策を話し合う会合であるFOMCを11月2日(火)~3日(水)の日程で開催した。FRBはコロナ後の量的緩和策として月に米国債を800億米ドル、MBS(住宅ローン担保証券)を400億米ドル、合計1200億米ドル買い入れる量的緩和を継続している。この会合では、この先、テーパリング(量的緩和の縮小)の11月開始、来年半ばの終了をアナウンスした。

FRBのパウエル議長は、物価の上昇は一時的との認識を繰り返していきたが、一向に収まる気配のない労働需給のひっ迫や高止まりする物価を前に、軌道修正を余儀なくされた。量的緩和はいわばコロナ後の経済を立て直すための緊急避難的政策であり、株価が史上最高値を更新、物価上昇が鮮明となるなかでは、政策修正の発表は半ば必然といえる。

11月より米国債を毎月100億米ドル、MBSを同50億米ドルずつ減額していけば、来年の半ばには買い入れをゼロとすることができる。テーパリングが現実のものとなったことで、焦点はこの先の利上げ開始時期や、利上げ幅、そして利上げの前倒しに移る。足元で、金融市場は2022年末まで約2回、2023年末まで約4回の利上げを織り込み、これまで「米ドル/円」の上昇を後押しした。

以下の相関図から、利上げの織り込み加速が「米ドル/円」の買い要因、利上げの巻き戻し(減衰)が「米ドル/円」の売り要因とわかる。この先の経済の過熱やインフレの加速は、将来の金融引き締めの前倒しから、利上げの織り込みを加速させ「米ドル/円」の上昇を後押しする。

以上をまとめると、コロナ後の経済の回復からの需給ひっ迫は当面続く可能性が高い。さらに、北半球の冬の到来からエネルギー需要、原油の需要は拡大傾向が続き、日本の貿易赤字の拡大傾向が迫る。需給要因、日本と米国の金融政策の方向性の違いも「米ドル/円」を底堅くする。「米ドル/円」の115円突破は時間の問題と考えている。

図表:筆者作成

図表:筆者作成

竹内 のりひろ氏プロフィール

竹内 のりひろ(たけうち のりひろ)
明治大学法学部1989年卒、以後一貫して内外の金融機関で為替/金利のトレーディング歴任。専門はG7通貨及び金利のトレーディング。1999年グローバル金融大手英HSBCホールディングス傘下HSBC香港上海銀行東京支店入行、取引担当責任者(チーフトレーダー)を務め、現在主流となっている、E-commerce(FX.all.com)の立ち上げにも参画。相場展望をする際、極力恣意的な自己判断、感情移入を排除する独自のアプローチを持ち、欧州事情にも精通している。2010年に独立し、大胆なトレードを日夜行っている。

本記事は2021年11月5日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、竹内のりひろ氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
さらに、かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について竹内のりひろ氏、および外貨ex byGMO株式会社は一切責任を負いません。最終的な投資判断は、他の資料等も参考にしてご自身の判断でなさるようお願いいたします。
※コンテンツ、データ等の著作権は外貨ex byGMO株式会社に帰属します。私的利用の範囲内で使用し、無断転載、無断コピー等はおやめください。

外貨ex口座開設者限定コンテンツ「プレミアムレポート」のご紹介

外貨exのお客さま限定の情報をお届けしております。PCの取引画面や外貨exアプリからご利用いただけます。

みんなのオーダー

外貨exで取引されているお客さまのポジション状況をグラフ化し毎日更新しています。

ご覧いただくには外貨exの口座をお持ちいただく必要があります。

外貨exの口座をお持ちの方

【スマートフォンをご利用のお客さま】
>外貨exアプリのダウンロードはこちら
①「外貨exアプリ」にログイン
②「為替情報」→「プレミアムレポート」

【パソコンからをご利用のお客さま】
>パソコン版取引画面へのログインはこちら
①取引画面にログイン
②左側メニュー「投資ツール」→「ニュース・レポート」→「プレミアムレポート」

外貨exの口座をまだお持ちでない方

新規口座開設(無料)はこちら

関連する記事

外貨exアカデミー

シリーズから選ぶ

投資にかかる手数料等およびリスクについて
当社ホームページ記載の金融商品へのご投資には、商品ごとに所定の手数料等をご負担いただく場合があります。各商品には価格の変動による損失が生じるおそれがあります。また、店頭外国為替証拠金取引をお取引いただく場合は、当社所定の証拠金が必要となり、元本を超える損失が生じるおそれがあります。なお、商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、当該商品等の「契約締結前交付書面」、「契約締結時交付書面」及び「目論見書」等をよくお読み頂き、それら内容をご理解の上、ご自身の判断と責任において、自己の計算によりお取引を行ってください。

FX・バイナリーオプションなら外貨ex byGMO
当社はGMOインターネットグループ
(東証プライム上場9449)のメンバーです。
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第271号
加入協会 日本証券業協会 
一般社団法人金融先物取引業協会 
一般社団法人日本投資顧問業協会

外貨ex byGMO