スペシャル・トレンドレポート

FOMC終了、米国の金融正常化から 「米ドル/円」上昇加速(竹内 のりひろ氏)

2021年10月1日
NYのシニアディーラー :「今年の半ば以降、コロナ後の景気回復の一巡感やデルタ株の感染拡大などから、米国では市場予想を下回る経済指標の発表が相次いでいましたね」
東京支店のチーフディーラー :「経済活動の再開から、需給ひっ迫も広く指摘され、供給制約などから自動車の生産まで減産を余儀なくされていた」
NYのシニアディーラー :「一時的に経済にブレーキがかかったような状態で、金利も低下に転じてしまいました。夏場の「米ドル/円」はさえない展開が続きましたが、ここにきて111円台をしっかり回復してきました」
東京支店のチーフディーラー :「やはりFOMC(注)を通過したことで不透明感が払拭され、金融正常化のロードマップがみえてきたのが大きいね」

(注)米国で金融政策を話し合う会合

この2人、実は先輩・後輩の仲だが、後輩は入社後のトレーディング実績を広く認められ、NY支店に転勤、昇進して業務を継続している。今や、先輩に引けを取らないレベルまで成長して、先輩・後輩の仲を超えて相場への議論は日々白熱している。この2人の話を総合すると、FOMCを通過したことが「米ドル/円」の上昇を加速させた要因らしい(後述)。

米国の労働省が9月3日(金)に発表した8月の雇用統計では、景気の動向を敏感に反映するNFP(非農業部門雇用者数)の増加幅はわずか+23.5万人の増加にとどまった。下振れに関しては、①人事担当者の夏休み、②メキシコ湾岸へのハリケーンの襲来、③夏のバカンス気分から失業者が求職活動を急がない等、これまでいろいろな要因が指摘されていた。

こうしたマイナス要因を加味しても、ネガティブ・サプライズで、「米ドル/円」は9月15日(水)にかけて、9月安値109.12円まで沈んだ。その後は、FOMCを前に、取引を見送る市場参加者も多く、中国の不動産大手恒大集団の財務不安などもあり、金融市場が不安定化するなか、「米ドル/円」は方向感に乏しい展開が続いた。

チャート:外貨ex byGMO MT4チャートより筆者作成
※インディケーターは筆者開発のTwinCloud®で売買シグナルを出すことが可能。太さの変わる2本の移動平均とお考え下さい。

図表:米国の労働省より筆者作成

現地時間の9月21日(火)~22日(水)の日程で開催されたFOMC、その後のFRBパウエル議長の記者会見を通じて、テーパリング(量的緩和の縮小)を次回11月会合で決定、年内開始、来年半ばに終了する方針が示された。同時に、2022年への利上げの前倒しも示唆された。FOMC声明では「雇用の回復が順調に進んだ場合、量的緩和の縮小に十分根拠が得られるだろう」ともした。

FRBは現在、米国債を月800億ドル、MBS(住宅ローン担保証券)を同400億ドル買い入れる量的緩和を続けている。こうした空前絶後の量的緩和を続けてきたことで、FRBの資金供給量を示すバランスシートは約8.5兆ドルとコロナ前の2倍強まで拡大する。

チャート:FRBより筆者作成

コロナ後の金融緩和であるゼロ金利政策や量的緩和は、以下の理由からの緊急避難的措置だった。①ロックダウンしかコロナ感染を防ぐことができない。②ワクチンの開発が未知数だった。③経済対策や金融緩和でしか失業者を労働市場に呼び戻せない。経済が回復、物価が上昇に転じ、失業者が労働市場に戻るなかでは、金融政策の修正は半ば必然なのだ。

テーパリングを仮に11月発表、12月開始と仮定すると、以下に図表のように米国債を毎月100億ドル、MBSを同50億ドルずつ減額していくだけで、来年の半ばには月間の買い入れ額をきれいにフラットにすることができる。

図表:筆者作成

2022年の利上げの見通しまでも示されたことで、市場の不透明感が一掃された。2023年末までの利上げの織り込みも加速、足元で3回弱の利上げを織り込む。コロナ後の金融緩和の正常化を好感して、リスクセンチメントの改善から、為替市場ではクロス円や「米ドル/円」が買い進まれ、後者は9月29日(水)の米国時間の引けまでに5日続伸、騰勢を強める(本レポートは29日(水)朝執筆)。

「米ドル/円」は年初来高値まであと2銭に迫る111.64円まで上昇、その更新までも視野に入る。以下の図表は、「米ドル/円」と2023年末までの米国の利上げの織り込みの回数の相関をプロットしたものだが、非常に強い相関が存在している。利上げの回数を“x”、その回数と整合的な「米ドル/円」の水準を“y”とすると両者には、y=1.7107x+106.02という相関式が成立する。

これは、この先にさらにフルに利上げを1回織り込んだ場合、その「米ドル/円」への影響は約1円71銭の上昇効果であることを示す。経済活動の一段の活発化、雇用の改善から利上げの前倒しが織り込まれた場合、これは「米ドル/円」では買い要因となる。

図表:筆者作成

CFTC(全米先物取引委員会)は、米国内にある各取引所に対し、それぞれの商品先物の建玉の定期的な公表を義務付けている。各取引所は、毎週火曜日の取引終了後の建玉数をCFTCに報告する。通称、シカゴ通貨先物市場の建玉残高はこうした経路をたどり、(CFTCより)米国時間のその週の金曜の午後に公開されている。

こちらの残高が意味するところだが、金融機関と相対で大口の取引をするヘッジファンドの取引残高ではない。CFTCの残高は、シカゴの投機筋のなかで、長年生き残った猛者たちの建玉で、ある程度市場の方向性を示唆する。CFTCの残高から、円の建玉数の推移を振り返ってみると、「米ドル/円」が年初来安値102.60円をつけた1月にはその買い残高は50520枚まで拡大していた。

その後は、「米ドル/円」の反転上昇に伴い、3月には売り残に転じ、6月29日(火)、売り残は69895枚まで拡大した。直近の9月21日(火)では売り残は56071枚まで減少、投機筋の円売り余力は十分といったところだ。

チャート:CFTCのデータから筆者作成
※建玉は軸を反転

この先、自民党総裁選挙や衆議院議員選挙等を控え、どうしても政策期待は高まりやすい。外国人投資家はこうした政治イベントに極めて敏感で、これまで株買い、円売りなどを広く仕掛けてきた過去がある。以上をまとめると、金融緩和の正常化が視野に入り、利上げの前倒しまで見通せる米ドルには一段の上昇余地がありそうだ。「米ドル/円」も再度上伸、年初来高値の更新から続伸する可能性も十分大きいと考えている。

竹内 のりひろ氏プロフィール

竹内 のりひろ(たけうち のりひろ)
明治大学法学部1989年卒、以後一貫して内外の金融機関で為替/金利のトレーディング歴任。専門はG7通貨及び金利のトレーディング。1999年グローバル金融大手英HSBCホールディングス傘下HSBC香港上海銀行東京支店入行、取引担当責任者(チーフトレーダー)を務め、現在主流となっている、E-commerce(FX.all.com)の立ち上げにも参画。相場展望をする際、極力恣意的な自己判断、感情移入を排除する独自のアプローチを持ち、欧州事情にも精通している。2010年に独立し、大胆なトレードを日夜行っている。

本記事は2021年10月1日に掲載されたもので、情報提供のみを目的としております。
記事の内容は、竹内のりひろ氏の個人的な見解かつ、掲載当日のものになるため、今後の見通しについての結果や情報の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。また、記事内のデータは、あくまでも過去の実績であり、将来の市場環境の変動などを保証するものではありません。
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